都市景観賞事業について

事業委員長  渡辺真啓

 半田市都市景観賞の選考委員会も無事終って、何とか峠を越した感があるとはいえ、まだまだやることは一杯あって、おちつかない日々の中で原稿をかいています。それにしても、初めての事業で何もわからず、右往左往するばかりでしたが、ここまで来れたのも事業委員会はじめ関係された多くの方々の御尽力のおかげと深く感謝する次第です。

 支部40周年の記念事業として都市景観賞を行うにあたっては、担当委員会として会合を重ね、どの様な賞とするかが討議されました。他市と違って士会主導でやるからには、何か士会でなければ出来ない様なものをとの思いがありました。半田市は「どんぐり緑化作戦」とか、「緑の国際シンポジウム」を開いたこともあり、緑化には力を入れてきた所ですから「緑の景観賞」などの特色あるものでもよいのではないかと考えたりもしました。結果的には、今後市にてこの事業を継続していただきたいとの思いから、他都市と歩調を合わせた方がよいのではということになり、また、より広く一般の方々からの応募をいただける様、チャームポイント賞や文化賞などを設けて、盛りだくさんの企画となりました。

 おかげ様で、予想を上まわる300近い応募をいただき、たいへん有難いことでしたが、その区分けや完成年の調査にあまり意味のない労力をつぎ込むことになりました。他にならって過去5年としたのは問題でした。考えてみれば、都市景観を評価するのに5年という期間は何ら根拠のないことです。むしろ、緑や文科的なものはその経年と共に魅力が増してくるわけですが、今回の応募対象からそういった重要な部分がぬけてしまったことは大変残念なことでした。また、いろんな賞を設けたことにも問題がありそうです。大きなものも小さなものも、古きも新しきも、同じ土俵の上で考えてこそよりよい都市景観の模索につながるのではなかったかと、大いに反省するところです。

 都市景観に対する貢献という観点からすれば、大きな建物は大きいだけに相応の景観への配慮が求めれる訳で、その責任はとても大きい訳です。また、部分が良いからといっても、やはり全体がちゃんとしてなければ景観としては片手落ちでしょう。

 片手落ちといえば、賞を出すだけでなく、景観の悪化をくいとめることも重要です。私見で恐縮ですが、最近特に目につくことで、田園風景を目かくしする看板群や、半田の空を浸食しだした高層建築を野放しにしておくのは問題です。半田くらいの都市では今さら高層化に必然性はないと思われます。低層で自然と融合した街づくりを是非ともめざすべきです。高度地区や緑化率の導入を計り、「街の中の森づくり」を強力に推し進めて欲しいものです。街路や駐車場を高木で覆い、緑被率を高めることにより、おのずと電線の地中化は促進され、目にあまる看板は無意味となって姿を消すと思うのです。かくして50年後には耐用年限のきた高層建物も姿を消し、「森の中の街」が出現するというのはどうでしょうか。

 話がそれましたが、今後の事業での反省を今後の都市景観事業の参考にしていただければ幸いと、つたない筆をとった次第です。半田市に共催していただいたことはこの事業を進める上で大きな力となりました。また、すばらしい先生方を選考委員としてお迎え出来たことは本当に幸いでした。終ってますます感謝の念を深くしております。そして、この事業に参加されたいろんな方々が、それぞれに都市景観に対する思いを新たにされたのではないかと考えると、私共も、その任を果たすことが出来たかなと思われるのです。

この文は、1993年発行の(社)愛知建築士会半田支部 創立40周年記念誌「40th ANNIVERSARY」 誌より転載したものです。

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